もしあの夏に奇跡が町に降り注いだら、その翼の折れた少女はどんな表情で私たちの前に立つのだろうか。
きのこけん先生によって描かれているこの神尾観鈴の絵を見ていたら、こういう疑問が思い浮かんだ。
これまで、人に見せたことのないこの笑顔について述べさせていただきます。
それは「Air」という名の夏に、ある母親が見た透き通る夢。
母親は少女の滝みたいな金色の髪を優しく切り、それを少女が再度青空へ羽ばたくための翼に編み出した。
「ここからやり直そう、二人でやり直そうな。」
少女は笑って、お母さんと呼んだ。
碧い海の海辺、母親は少女を車椅子に乗せ、それを押しながら少女の散歩に付き合う。突然、車椅子にいる少女は立ち上がった。ふらふらと歩いて倒れそうに見えた。
母親はびっくりして声を上げるが、少女はしっかりと立っていた。振り返って、母親に向けてV字のサインを投げた。
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少女の体の調子がますますよくなり、ある日ようやく車椅子から離れ、日常生活ができるほどまで回復した。
久々に学校の制服を身に着け、少女の顔に暖かい笑顔が浮かぶ。その背後には、まるで金色の翼が光っているように見えた。
「行ってきます、おかあさん。」
どんなに透き通る夢でも覚めるときはあるかもしれないが、この際、私たちが見たのはある母親からの最も真摯な願いだった。
もし奇跡が降り注いだら、少女の表情はきっと、この絵の笑顔であろう。
「私たちの幸せは、これからですよ!」
文:大鸟咲夜
訳:kanachan
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